プロヴァンスレポート

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フランスの南部を代表するプロヴァンス地方は、穏やかな地中海性気候に恵まれ、世界中から観光客が訪れています。
東のアルプスの山々を望みローヌ川にかけて広がるエリアは、変化に富んだ地形が美しい風景を創り出しています。
プロヴァンスはイタリアとスペインに挟まれた交通の要衝。
そのためさまざまな侵略と支配が繰り返されてきました。
紀元前、ギリシャの植民地になり、その後、ローマに支配が移り繁栄した。
プロヴァンス王国が創設されたのは九世紀のこと。
しかし、繰り返される侵略や統合で平和が戻ったのは十八世紀になってからのことです。

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この国はヒューマンな国と言われるように、外国籍の人にも寛大です。
今では多くの外国人が住んでいますから、住宅にも多少の変化がみられます。
物価は高くなっています。でも、ここプロヴァンス地方では、農産物は安くて、1Kg200円程度です。しかし一部を除いて、それ以外のものは高く感じます。
住宅も比較的高いようですが、基本的に建替えは考えなくて済みますから安いのかもしれません。

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昔から、ほとんどの家庭は農業従事者でした。いまでもそのような家は多く、その面影を残しています。
その時代の農業は貧しく、住まいは小さな長方形の住宅でした。
その形から少しずつ変化してきたそうです。昔は地元から産出される石を使い、機械がないので手作業で家が建てられました。
そして、家の一部や隣接して鳩小屋をつくりました。これは、鳩を飼育して糞を肥料としたからです。
昔の典型的なスタイルは上の写真のように敷地入口には石の門があり、
夏の暑い日差しを避けるためにプラタナスの木やオリーブの木、南側には葡萄棚などがありました。

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今では石造りの家をつくるためには膨大な費用がかかるので難しくなったそうで、最近の家の構造はブロック仕様が主流です。
フランスの人は、一生のうちに2度、家を建てることがありません。
建替えることより、リフォームや住まいが狭くなれば買換えや、親から家をもらうケースも多いようです。

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青い空、太陽、自然はこの地方のシンボルです。
昔から、公共建物のモニュメントの飾りにもこのような内容が彫刻されています。
この飾りを復元してフランス職人最高賞を受賞したアラン氏にも、プライベートと職人展でお会いしていろいろと説明を受けました。

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上の写真はアラン氏が施工したお宅です。
彼の友人のアイアン職人にもお会いしていろいろとお話をお伺いしましたが、彼の作品は個性的で比較的大型の作品です。
中世のモニュメントを再現した作品も目を引きました。

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バノンの村の風景

フォンテーヌから、車で2時間ほど走ると、スージーさんの故郷に着きました。
中世を彷彿させる小さなバロン村は、2月にはアーモンドや桃の花、6月はラベンダーの花が咲く非常にきれいな場所。
この時期はシーズンオフの時期。

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築350年のお住まいを見学

村を見学後、スージーさんのお友達のお住まいで、築350年のお住まいを見学させて頂きました。
さっそく、ご主人が案内してくれて、事細かに説明していただきましたが、そのような家についてのお話の中でも、 「家は、祖先から引き継いで大切に守り、子世帯に引渡すことは当り前のこと」という言葉は印象に残りました。
建替えの質問をしてみましたが、タブーであることを痛感しました。
地下室にも案内され、当時の材料を使い復元されている様子などを見学しました。
歓迎していただき感謝です!

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セザンヌが愛した山、サントビクトワール山の麓の邸宅

エクス・アン・ブロバンスから20分程車を走らせると、画家のセザンヌが愛した山、サントビクトワール山が見えます。
その麓に佇む建築家のお宅に訪問しました。
広大な敷地をはいって行くと、広いガーデンを配置した邸宅に着きました。
アンデイー・パル氏は南仏で有名な建築家で、その屋敷兼ペントハウスを案内していただきました。
外観はプロヴァンスっぽい住宅ですが、正面玄関には和風の庭を配置して内部はシンプルでモダンな雰囲気になっています。
住宅のテーマはパンプルムース、すなわちグレープフルーツですが、上手く説明できません。
一つ一つのマテリアルにもこだわっていることが頷けます。
小物などもデザイン性が高いものがあり、後日、情報交換をするようにしています。

フランス人は住まいを見せることが好きでないということでしたが、今回は南仏で多くの方々のお住まいを拝見することができました。
画家や、オリーブ農園、サラリーマン、教師、建築家、歴史的建造物にお住まいのご自宅等々、多くの方に歓迎していただき、住まいのこと以外にも、いろいろと情報交換をさせて頂いたことは大きな収穫です。
少し昔の家はこのようなスタイルだったそうです。
と言うのも、夏場は非常に暑く、門をはいった敷地にはプラタナス等の木で木陰をつくっていました。
建物は正方形や長方形で左右対象、上下の窓も対象が一般的でした。

ですから、先人の知恵で、木陰をつくる棚などは今の住宅にも採用されています。

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この地方の住宅は郊外になると150坪以上が一般的です。敷地が広いので平屋や一部総2階建てが多いようです。
昔の家は機械がなかったので手作業の石造住宅です。
当時は黄土色の砂に石灰を混ぜて練ってモルタルのように使っていましたが、今ではコストを下げるために、壁は断熱材とブロックが主流です。
屋根は木造で重量を軽減するため、薄い素焼きの瓦が使われていますが、割れの心配は否めません。
もう一つ外観の大きな特徴として、木製の雨戸がついていますが、カラフルなものが多いようです。
この地方はフランスの避暑地でもでもあり、温暖な地中海性気候の青い空の下で、パステルカラーが発達したそうです。
門は大型で車庫と兼用ですが、鉄に塗装したものが一般的です。
庭は日本の庭のように整然とした感じはなく、古い家にはプラタナスの木、オリーブの木、キョウチクトウ、葡萄棚などはある程度で芝を植えている家庭も多いようです。

バルコニーがなく、室内環境を整えるため、窓が小さいことも特徴です。

敷地にはいる入口は、立派な鉄の門のお住まいが多く、敷地内は、手をかけた庭は少いものの、それなりに見栄えがします。

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日本と違うのは、室内でも床はタイルで靴を履いたままの生活です。でも意外と経験してみると、靴を脱ぐ煩わしさがないのがいいですね。意外とそのような住宅に住むと、慣れるのも早いかもしれません。
内装はパステルカラーの使い方が上手く、各部屋、各所に家具を配置して、見せ場をつくっています。照明は明暗をハッキリ出しています。カーテンの使い方もオシャレですね~。家具はどちらのお宅もアンテイーク風なものが多く、非常に凝っています。

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今回、単独で南仏に行ったのは、やはりプロヴァンスのことを知りたかったことに他なりません。私は住宅の仕事をしていますので、住宅を知ることはもちろんですが、広い意味で、そこに住む人々の歴史や、生活習慣、考え方。そして、それが住宅にどのように息づいているのか?そのようなことを純粋に知りたいと思ったからです。
ですから、訪仏に際しては、そのことを最初に先方にお話していましたので、そのような訪問目的に感激されることも多くありました。
限られた時間で多くのことを知るため、時間を惜しむように多くの方々と意見交換をしました。
時として、夕食にご招待され、時間を忘れるように夜遅くまで話し込むこともしばしばでした。
個人に寛大なフランスの素晴らしさや、それゆえに、抱える問題点や今後課題。そして、教育問題などにも触れました。
モロッコ系フランス人に比べて、フランス人はプライベートを見せたがらないということでしたが、そのようなことは全く感じませんでした。それは、最初に知り合った3人のフランス人の人望によるものだったのかもしれません…。そのお陰で、数多くの新しい出会いがあり、多くの気付きもありました。
フランス人の誘いのままに行った田舎町、バノンやセギュレのような場所でも観光大国のフランスです。シーズンになると世界中から多くの観光客が押し寄せる場所ですが、今はシーズンオフで、普段の佇まいを垣間見ることができました。世界中から人が来るのも頷ける魅力があります。ブロバンス地方は山あり谷ありの風光明美な自然豊かな場所ですが、そのような広大な場所に、中世から点在する村がそのままの姿で残っていて、いまでも昔と同じように生活していることもこの地方の特徴です。今でも農業は主要産業の一つで、昔は貧乏だったかも知れませんが、ワイン産業を中心に潤っているようにもみえました。
住宅では、家の建て替えを考えている人はいませんでした。親からもらった家を大切に使い、次の世代に受け渡します。建替えせず、狭くなれば、大きな家へ買換えするようです。或いはリノベーションやリフォームすることを考えています。
アメリカのように大きくて豪華ではありませんが、何となく、若い世代にも受け入れられる住宅のような気がします。確かに日本人好みです。
室内にはいると、必ずと言っていいほどアンテイーク家具があります。アンテイーク家具の持つ雰囲気は、たとえ、新築の住宅であっても、落ち着きと安らぎをもたらします。
それと見逃せないのが、地中海性気候で発達したパステルカラーのコーデイネートです。照明の使い方も雰囲気がでるようなレイアウトで暖かみを感じます。
訪問したどちらのお宅にも、庭にはオリーブの木があって、収穫時期になると、ハーブと一緒に漬け込んでいます。日本で言う漬物です。ハーブも野山に行けば自生していて、簡単に手に入ります。
食生活では、日本人は、フランスと言えばフランス料理のコースを想像しがちですが、家庭料理は至って簡単。ワイン、パン、チーズ、サラダ、スープが主食かな?メイン料理は?と思えるくらいです。 昼休みは2時間ありますので、恐らく昼食が一番豪華かもしれません。このような食生活に慣れていない日本人にとっては、1週間の滞在が限度かもかれません。想像するに、ずっと日本人が美食家であることがわかります。
最後の二日間は、食欲がなくスーパーの買物で済ませましたが、美味いと思うものには出会えませんでした….。
滞在は1週間でしたが、短い時間に多くの知識を吸収できました。これから、住宅の仕事を通し、今後の家づくりに役立てようと思っております。